2023/07/10

派遣の3年ルールとは何?イラストで分かりやすく解説

派遣の3年ルールとは何?イラストで分かりやすく解説

派遣会社が派遣先の企業に派遣社員を従事させる場合、法律によって派遣期間に制約を受けることになります。この制約が「派遣の3年ルール」と呼ばれるものです。

派遣は、仕事内容や待遇など自分の理想とする働き方を実現しやすい雇用形態と言えます。しかし、派遣社員として働く以上、このルールが適用されることをきちんと理解しておきましょう。

本記事では、派遣の3年ルールに関する概要や例外的な事例について解説します。

この記事でわかること
  • 派遣の3年ルールの概要がわかる!
  • 派遣の3年ルールにおける事業所単位・個人単位の違いがわかる!
  • 派遣の3年ルールの例外がわかる!
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派遣法における派遣の3年ルールとは

派遣社員は、同じ企業の同じ部署で働ける期間が最長3年間までと規定されています。派遣の3年ルールの概要と導入の背景、派遣の5年ルールとの違いを確認してみましょう。

3年ルールの概要

3年ルールの概要

派遣の3年ルールとは、派遣社員が同じ職場かつ同じ部署では3年を超えて働けないというルールです。この制約は契約期間に定めのある有期雇用の派遣社員が対象となります。

以前は派遣期間に限度はなく、同じ職場・同じ部署で長く働けていました。しかし、2015年の派遣法改正以降、同じ職場・同じ部署での派遣可能期間は「上限3年まで」と制限されています。

3年以降も継続して勤務を希望する場合は、正社員や契約社員など、派遣先の直接雇用、または派遣元での無期雇用派遣社員などに転換する必要があります。

3年ルール導入の背景とは

2015年9月に派遣法が改正され、派遣の3年ルール導入の運びとなりました。この改正は派遣として働く方の待遇改善やキャリアアップが適正に図られることを目的としています。

また、同じ改正で全ての企業に対して派遣業を行うためには国に許可を受けなければならないよう変更されました。これらの改正は、過去、一部の悪質な事業者が派遣労働者に不当な待遇を行い社会問題にまで発展したことが背景にあります。

さらに改正後は業務ごとの期間制限を廃止し、すべての業務で期間制限が統一されています。改正前は特定の26業務(政令26業務)とその他の業務(自由化業務)では派遣可能期間の制限が異なっていました。

派遣の5年ルールとは何が違う?

派遣の5年ルールは、2013年4月改正の労働契約法で定められたルールで、派遣社員のような有期契約で働く労働者が、通算5年働くことで「無期雇用」への切り替えを申し込めるという制度です。

派遣元に申し込むことになりますので、5年間の内、派遣先が変わったとしても、同じ派遣元企業から継続して雇用されていれば申し込むことができます。

3年ルールは派遣として同一の派遣先企業で働ける期間のルール、5年ルールは派遣元企業との契約期間に応じて無期雇用へ転換できるルールという違いがあります。

なお、5年ルールは派遣社員や契約社員、アルバイトなどすべての有期契約労働者が対象となり、適用を受けるためには、同一の使用者との労働契約の通算期間が5年超えていることや労働契約の更新が一回以上行われているいう条件があります。

契約途中で一定の無契約期間がある場合、通算できない場合があるため注意が必要です。

派遣の3年ルールは事業所単位と個人単位に分かれている

派遣の3年ルールは、派遣先企業ごとの「事業所単位」と派遣労働者の「個人単位」という二つの期間制限に分けられます。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

事業所単位(派遣先企業)の3年ルール

事業所単位(派遣先企業)の3年ルール

事業所単位の3年ルールとは、派遣社員を同一事業所(派遣先企業)において3年を超えて就業させることはできないというものです。このルールは「派遣先の同一事業所」で3年というルールであり、一人の派遣社員ごとに3年という制限が設けられているわけではありません。

例えば、1年前からAさんが働いている派遣先企業でBさんが働き始める場合、Bさんが派遣社員として働けるのは2年ということになります。この場合、AさんとBさんの派遣元企業が同じか別かは関係がありません。

派遣先が受け入れられる期間の制限が3年というルールですので、派遣先企業が期間の延長に向けて動かない場合、Bさんは3年を迎えず、事業所単位の期間制限期間終了と共にその派遣先企業では働けなくなります。

事業所単位での派遣延長は可能です。延長方法として以下の二つがあります。

  • 派遣先企業内での意見聴取の実施
  • 3ヵ月のクーリング期間を設ける

それぞれ詳しく見てみましょう。

延長方法1.派遣先企業内での意見聴取の実施

派遣先企業内での意見聴取の実施

派遣先企業が、その企業の過半数労働組合(なければ過半数代表者)に意見の聴取を行うことで、派遣社員の受け入れが3年を上限として延長できます。なお、企業が3年で派遣を打ち切ることは少なく、多くの企業では延長措置を取っているのが実情です。

事業所単位の期間制限は個人単位よりも優先されます。延長の回数についてもとくに制限はなく、きちんと手続きができていれば何度でも延長することが可能です。

延長方法2.3ヵ月のクーリング期間を設ける

派遣のクーリング期間とは、事業所単位や個人単位での派遣制限をリセットできる期間のことです。3年間の派遣期間を終了しても、3ヵ月以上(3ヵ月と1日以上)のクーリング期間を設定することで、再び同じ職場で3年間働けるようになります。

3ヶ月のクーリングによる派遣延長

事業所単位の期間制限と同様に、一人の派遣社員ごとに3年延長されるわけではなく、事業所として派遣社員全体の受け入れ期間が3年延長されるという点に注意しましょう。

なお、派遣期間の延長手続き(意見聴取など)を回避する目的でクーリング期間を設けることは指導等の対象となります。さらに、クーリング期間だけの直接雇用も派遣法により禁止されています。

個人単位(派遣労働者)の3年ルール

一人の派遣社員を同じ事業所の同じ部署に派遣できる期間の上限は3年までになります。「事業所単位」の期間延長により派遣社員の受入される期間が延長されたとして、延長後も同じ職場かつ同じ部署で働けるのかというとそうではありません。

3年を超過して派遣期間を延長する場合は、同じ派遣先企業で違う組織(部署)へ移動することで3年を超えての従事が認められます。これが個人単位における派遣の3年ルールです。

ただし、部署の移動が必要なのは3年を超えて延長する派遣社員のみになります。

個人単位(派遣労働者)の3年ルール

仮に、Aさんが3年で退職してBさんが新しく働き始める場合、BさんはAさんと同じ部署でも問題ありません。Aさんが同じ事業所で3年を超えて働く場合は、部署の変更が必要です。

また、個人単位の3年ルールも事業所単位と同様に、3ヵ月超えのクーリング期間を設けることで延長が可能になります。しかし、クーリング期間終了後に同じ企業への再雇用が約束されているわけではない点に注意しましょう。

なお、派遣労働者が希望していないのにも関わらず、クーリング期間を設けて同じ企業へ派遣することはキャリアアップの観点から不適切とされています。よってクーリング期間後の再雇用は、あくまでも派遣社員の意向ありきです。

派遣3年ルールの例外

以下に該当する派遣社員は、3年ルールの例外となります。

  • 無期雇用の場合
  • 3年以内に部署を移動している場合
  • 60歳以上の場合
  • 終期が定まっているプロジェクトに派遣する場合
  • 日数限定業務を行う場合
  • 産前産後・育児・介護で休業を取得中の従業員の代わりに派遣される場合

無期雇用の場合

無期雇用とは、期間の制約がない雇用形態のことで正社員などが該当します。前述したように、3年ルールは有期雇用の派遣社員が対象です。このため、派遣会社と無期雇用形態を結んでいる労働者は、派遣の3年ルール適用外となります。

3年以内に部署を異動している場合

上述したように、異なる部署へ異動すれば3年を超えて同じ派遣先企業での就業が可能となります。この決まりは3年を超えた場合のみに限らず、3年以内に別の部署に移動している場合にも適用されます。

そして、異なる部署へ異動した時点から期限が3年に伸びるため、3年ルールの適用外となるのです。

例えば、人事課で2年間働いている派遣社員の場合、通常であれば残り1年の派遣期間となります。しかし、部署を変えて総務課に移動した場合、その時点で今までの派遣期間がリセットされるため、さらに3年働くことが可能となります。

60歳以上の場合

派遣業務開始日または派遣業務開始日から3年経過した時点で、派遣社員の年齢が60歳以上となる場合、3年ルールは適用外です。例えば、59歳の時点で派遣先企業での就業を開始し、3年経過後は62歳となっている方などが該当します。

派遣会社に登録するにあたっては年齢制限はありません。雇用対策法の改訂以降、募集・採用における年齢制限を設けることは禁じられているためです。よって60歳以上の方は、派遣社員であっても安定した雇用が期待できるでしょう。

終期が定まっているプロジェクトに派遣する場合

期限が明確に定まったプロジェクトに参加する場合、3年ルールの適用外です。派遣期間が3年を超過したとしても、そのプロジェクトが終了するまで業務を継続できます。

例えば、業務開始日の2023年4月1日からプロジェクトがスタートし、終了日が約4年後の2027年3月31日だとしても、この終了日を迎えるまで従事可能です。

日数限定業務を行う場合

1ヵ月の勤務日数が通常の労働者よりも少なく「10日以下」で、加えて「通常の労働者の半分以下」に当てはまる場合が該当します。この条件にあたる派遣社員は、3年ルールが適用されません。

通常の労働者とは、原則として正規の従業員を指します。

産前産後・育児・介護で休業を取得中の従業員の代わりに派遣される場合

派遣先企業の従業員が、産前産後・育児・介護による休業を取得しているとき、その交代要員として派遣社員が就業する場合は3年ルールの適用外となります。3年ルールが出産や子育て、介護の障害とならないよう配慮したものです。

そのほか、3年が経過したあとも同じ職場で働きたい場合は、派遣先の企業に直接雇用してもらうという選択肢もあります。

派遣先企業としても、仕事に慣れた社員に働いてもらいたいと考えている場合もあるので、一度派遣会社に相談してみてはいかがでしょうか。

派遣の3年ルールまとめ

3年ルールとは、派遣社員が同じ事業所の同じ部署で3年以上働くことはできない制約のことです。

  • 事業所単位(派遣先企業):同一の派遣先企業が派遣社員を受入できる期間は3年
  • 個人単位(派遣労働者):一人の派遣社員が派遣先企業の同じ部署に派遣で働ける期間は3年

これらの違いをふまえたうえで派遣の3年ルールをしっかりと理解し、安心して働けるようにしましょう。

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この記事を書いた人

ワークスタッフ コラム制作チーム

人材派遣業務を展開しているワークスタッフのコラム制作チームです。人材派遣に関連した情報をコラムを通じてお届けします。平成10年から携わってきた労働者派遣に関する情報を、当社の経験を踏まえて正しくわかりやすくお伝えします。