無期雇用派遣とは|ほかの雇用形態との違いやメリットを解説
事業所単位での派遣延長は可能です。延長方法として以2015年に無期雇用派遣という雇用形態が登場したことで、派遣社員という働き方の可能性が広がりました。一般的に派遣というと有期雇用派遣を想像する方が大半ですが、具体的に無期雇用派遣はどのような点で違いがあるのでしょうか。
本記事では、無期雇用派遣と有期雇用派遣や正社員の違い、無期雇用派遣として働く条件を解説します。現在、派遣で働いている方もこれから働こうとしている方も、無期雇用派遣のメリットとデメリットを知り、働き方の選択肢を増やしてみましょう。
- この記事でわかること
-
- 無期雇用派遣と有期雇用派遣の違いがわかる!
- 無期雇用派遣と正社員との違いがわかる!
- 無期雇用派遣のメリットとデメリットがわかる!
無期雇用派遣とは
派遣における無期雇用とは、派遣会社と期間の定めのない雇用契約を結んだうえで、派遣先企業に勤務する働き方を指します。常用型派遣とも呼ばれ、同じ職場で上限3年までしか働けない「派遣の3年ルール」が適用されないことから長期間にわたる勤務が可能です。
無期雇用派遣においては、派遣先での契約期間が終了しても派遣元との雇用契約が継続されます。次の派遣先が決まるまで原則として給料が支払われるため、収入が安定しやすいのが特徴です。
有期雇用派遣との違い
一般的に「派遣」というと、有期雇用派遣を想像する方も多いでしょう。派遣会社に登録してから仕事を紹介されるため、登録型派遣とも呼ばれます。無期雇用と有期雇用派遣の大きな違いは、雇用期間に関する定めの有無です。
有期雇用は、派遣先で就業する期間だけ派遣会社と雇用契約を結んで働きます。また派遣法により、同じ事業所・同じ部署での勤務は最長3年までと定められていることも特徴です。
ある派遣先企業での就業期間が終了したら、次の派遣先が決定するまで給料の支払いは行われません。派遣先が決まってその都度雇用契約を結ぶため、収入が不安定になる可能性があります。
そのほか、無期雇用と有期雇用の主な違いは以下のとおりです。
無期雇用派遣(常用型派遣) | 有期雇用派遣(登録型派遣) | |
---|---|---|
雇用契約 | 常時 ※派遣先企業での就業契約が終了しても契約は切れない |
派遣先での就業が開始した日から就業契約終了の日まで |
雇用契約の期間の定め | なし | あり ※原則、最長3年 |
給料の支払い | 固定 ※次の派遣先が決まるまでのあいだも休業手当が支払われる |
派遣先企業での就業期間中に限る |
給料の金額 | 固定 | 派遣先企業によって異なる |
賞与 | あり ※会社によって異なる |
なし ※会社によって異なる |
交通費 | あり ※会社によって異なる |
なし ※会社によって異なる |
無期雇用派遣は基本的に正社員と同様の待遇ですが、有期派遣雇用は賞与や交通費が支給されないこともあります。派遣社員の場合、これらが基本給に含まれているケースも多く、アルバイトやパートと比較して給料が高めに設定されていることがその理由です。
なお有期雇用派遣の期間は最長3年ですが、条件によっては期間の延長もできます。
正社員との違い
無期雇用派遣も正社員も、雇用期間の定めのない雇用形態である点は同じです。給料は月給制で、派遣会社によってはボーナスも支給されます。どちらの雇用形態も、正当な理由なしに解雇されることはありません。では、無期雇用派遣と正社員にはどのような違いがあるのでしょうか。派遣会社の正社員、派遣先企業の正社員それぞれと無期雇用派遣の違いを解説します。
派遣会社の正社員との違い
両者の大きな違いは、勤務地と業務内容です。無期雇用はあくまで「派遣」として雇われているため、派遣会社内での業務は行わず、派遣先企業で働くことが前提となります。仕事の指示も派遣会社から受けるわけではなく、派遣先企業から指示を受けて業務を進めることになるでしょう。
とはいえ両者とも派遣会社に雇用されている点は同じであり、基本的に給料などの待遇に違いはありません。
派遣先企業の正社員との違い
両者の大きな違いは、待遇面と働く期間です。無期雇用派遣の労働者は派遣会社と雇用契約を結んでいるため、派遣先企業の社員と全く同じ額面の給料や直雇用社員のみ対象とした財形貯蓄制度等の福利厚生は受けられません。(ロッカーや食堂利用といった一般的な福利厚生は別の法律にて受けられるように取り計らうことが定められています)それと同時に、派遣先企業の給与形態や賞与額が変わっても派遣社員には影響がないとも捉えられます。
また、無期雇用派遣は雇用期間に定めがなく、派遣先企業で長く働くことが可能です。しかし、その派遣先企業との就業契約が終了すれば就業先を変更せざるを得なくなります。
派遣先での立場はあくまでも派遣社員となるため、勤務先が変わる可能性はあるということを覚えておきましょう。
無期雇用派遣として働く方法と条件
有期派遣雇用と比較してメリットも多い無期雇用派遣ですが、働くために条件はあるのでしょうか。無期雇用派遣として働くための方法を解説します。
最初から無期雇用派遣として入社する
無期雇用派遣の募集へ応募し、派遣会社に採用されることで、最初から無期雇用派遣として入社できます。正社員のような書類選考や面接による選考があるため、有期雇用派遣と比較すると難易度は高くなるでしょう。
登録型派遣のように登録したからといって無期雇用として働けるわけではなく、選考により不採用となる可能性もあります。しかし、入社できれば派遣先企業で経験を積みつつ、長期的なキャリアアップを目指すことが可能です。
有期雇用派遣から転換する
最初は有期雇用として働き、あとから無期雇用に転換する方法もあります。有期雇用派遣から無期雇用派遣に転換するための条件は以下のとおりです。
- 有期雇用としての契約期間が通算5年を超えていること
- 契約の更新が1回以上あること
- すべて同じ派遣元企業で雇用契約があること
なお、条件を満たしても自動的に無期雇用に切り替わることはなく、自分自身で派遣会社に申し込む必要があります。派遣会社は、労働者の申し出を断ることはできません。上記の条件に当てはまる方なら、必ず無期雇用への転換が可能です。
また、働いた期間が5年を超えていなくとも、契約期間が通算5年を超えればその時点で無期雇用への転換を申し込めます。
引用元:確認しよう!無期転換ルール|日本労働組合総連合会上記のように3年働いたあとに更新を行う際、更新後の契約期間が2年を超えていれば通算5年になるため、その時点で無期雇用への転換が可能です。無期雇用に切り替わるのは、新たに更新した3年間の契約が終了したあとになります。
ただし、無期雇用派遣に転換できたとしても、必ず派遣会社の正社員になるわけではありません。派遣会社とのあいだに期間の定めのない労働契約が成立するだけということを覚えておきましょう。
無期雇用派遣として働くメリット・デメリット
無期雇用派遣として働いた場合、次のようなメリットを享受できる一方で、いくつかのデメリットが伴います。
メリット デメリット 安定した収入を確保できる 充実したフォローを受けられる 派遣先企業を選べない 自由な働き方ができないここでは労働者としての視点から、無期雇用派遣で働くことのメリットとデメリットを確認してみましょう。
無期雇用派遣のメリット
安定した収入を確保できる
無期雇用派遣は、派遣先が決まるまでの待機期間中でも休業手当を受け取れます。無期雇用派遣は月給制となるケースが多く、毎月安定した収入を得られることは大きなメリットでしょう。
また、派遣会社によっては会社で規定した昇給や賞与なども受け取れる点も魅力的です。
充実したフォローを受けられる
無期雇用派遣は、通常の派遣よりもキャリアアップのための教育支援を受けやすいです。
派遣会社は、すべての派遣労働者に対して「キャリア形成支援制度」を設けることが法律によって定められています。なかでも無期雇用派遣に対しては、長期的なキャリア形成を考慮した支援を用意する必要があるため、派遣として業務経験を積みながら手厚いフォロー体制を得られます。
無期雇用派遣のデメリット
派遣先企業を選べない
無期雇用派遣では、派遣会社からの業務命令に従うことになります。希望はある程度考慮してもらえるものの、ときには意に沿わない職場へ派遣されることもあるかもしれません。
これは正社員で言うところの転勤のようなものと認識しましょう。
自由な働き方ができない
無期雇用派遣で働く場合、派遣社員特有の自由な働き方ができなくなることがデメリットとして挙げられます。派遣先によっては、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選べなくなるかもしれません。
また、有期派遣雇用のように自分の好きなタイミングで契約を終了し、長期休暇を取ることもなかなか難しいでしょう。
無期雇用派遣についてまとめ
法改正によって生まれた無期雇用派遣は、派遣会社と期間の定めのない雇用形態を結ぶ働き方です。メリットとデメリットの両面がありますが、派遣社員として安定した長期勤務を考えている方にとっては働きやすい環境だと言えるでしょう。
初めから無期雇用派遣としての採用を目指すほか、条件を満たすことで有期雇用派遣から転換を申し込むことも可能です。キャリアアップの手段として無期雇用派遣を活用したい方は、自身に合った働き方ができるかどうかを検討したうえで派遣会社へ相談してみてはいかがでしょうか。