派遣社員は有給休暇を取得できる?条件や日数をわかりやすく解説
派遣社員として働くにあたって、有休がもらえないのではないか、取りにくいのではないかと不安を抱えている方もいるでしょう。
しかし、有休の取得はすべての労働者の権利であり、雇用形態を問わず取得が可能です。企業は正社員、派遣社員に関係なく決められた日数の有休を取得させるよう労働基準法で定められています。
ただし、取得するには一定の条件を満たさなければなりません。本記事では、派遣社員の有給の取得条件や付与日数、取得日の賃金などをわかりやすく解説します。
- この記事でわかること
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- 派遣社員の有休取得条件
- 派遣社員の有休日数と賃金について
- 派遣社員の有休の申請先
派遣社員でも年次有給の取得は可能
有給休暇は正社員はもちろんのこと、派遣社員やアルバイトといった雇用形態に関係なく、条件に当てはまれば誰でも取得が可能です。年次有給休暇については、労働基準法で以下のように定められています。
また平成31年4月からは、すべての会社で従業員に対し、年間の有休消化日数を5日以上取得させることも義務化されました。業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法第39条)。
派遣社員の有給休暇の取得条件
前述したとおり、派遣社員も条件に当てはまれば有給休暇を取得できます。派遣社員独自のルールがあるわけではなく、取得条件はほかの雇用形態と変わりません。
有給休暇の取得条件は下記の2つです。
- 雇用契約を結んでから継続して6ヶ月勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
例えば、労働基準法で定められた労働時間の上限(1日の労働時間8時間・週の労働時間40時間)で働いている場合、年間の労働日数は260日となります。その8割以上の208日以上を勤務している派遣社員であれば、有給の取得対象です。
なお全労働日とは、労働契約等で定められている休日以外の労働日を指します。雇用契約で「土日祝休み」と規定されている場合の全労働日は「月・火・水・木・金」です。
よって休日出勤は全労働日に含まれません。また、そのほかの休業理由については以下のように扱われています。
休業の種類 | 全労働日に含むか否か |
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業務上で負ったケガや病気によって休業している期間 | 全労働日に含まれる |
法律で定められた産休・育休・介護の休業を取得している期間 | 全労働日に含まれる |
会社都合によって休業している期間 | 全労働日に含まれない |
派遣の有給の取得可否は雇用形態によって変わる
派遣社員の雇用形態は「登録型派遣(有期雇用派遣)」「常用型派遣(無期雇用派遣)」「紹介予定派遣」の3種類があり、いずれの雇用形態を結んでいるかによって有給が取得できるかどうかは変わってきます。
ここでは、派遣社員の雇用形態別に有給の取得可否を確認してみましょう。3種類の雇用形態の違いについては、以下の表をご覧ください。
雇用形態 | 雇用形態の詳細 |
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①登録型派遣(有期雇用派遣) | 契約期間をその都度更新し雇用契約を結ぶ雇用形態 |
②常用型派遣(無期雇用派遣) | 期間の定めのない雇用形態 |
③紹介予定派遣 | 派遣スタッフとして最長6ヶ月間働き、のちに派遣先企業で直接雇用されることを見込んだ雇用形態 |
登録型派遣(有期雇用派遣)の有給取得について
雇用形態 | 雇用形態の詳細 |
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①登録型派遣(有期雇用派遣) | 契約期間をその都度更新し雇用契約を結ぶ雇用形態 |
登録型派遣は3ヶ月、6ヶ月のように期間を定めて契約する雇用形態です。このため契約内容によっては、有給休暇の取得条件に当てはまらないケースが出てきます。
以下の図を例に見てみましょう。
Aさんは、派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を1年間結んで働きました。この場合、6ヶ月後には有給休暇取得の権利が与えられます。
Bさんは、当初4ヶ月間の雇用契約を結び、さらに契約更新を行って5ヶ月間仕事をしました。この場合、更新後の2ヶ月後に有給休暇取得の権利が与えられます。
Cさんは3ヶ月間の雇用契約を繰り返し結びました。しかし、そのあいだに空白期間があることから6ヶ月以上の継続勤務とはみなされません。よって、有給休暇の取得条件を満たさないことになります。
常用型派遣(無期雇用派遣)の有給取得について
雇用形態 | 雇用形態の詳細 |
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②常用型派遣(無期雇用派遣) | 期間の定めのない雇用形態 |
常用型派遣(無期雇用派遣)は、就業先での勤務期間が終了しても派遣元会社との雇用契約は継続します。よって、常用型派遣の場合は前述した2つの条件に当てはまれば有給休暇の取得が可能です。
派遣社員が有給休暇を取得する際、「派遣元会社の従業員」である以上は派遣元会社で取得の条件を満たさなければならない点に注意しましょう。
紹介予定派遣の有給取得について
雇用形態 | 雇用形態の詳細 |
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③紹介予定派遣 | 派遣スタッフとして6ヶ月間を超えない範囲で働き、のちに派遣先企業で直接雇用されることを見込んだ雇用形態 |
紹介予定派遣の場合、最初からその雇用形態で働いているのか、途中から紹介予定派遣になったのかによって有給の取得可否が変わってきます。
最初から紹介予定派遣で派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結んだ場合
紹介予定派遣は6ヶ月を超えて働けないため、最初から紹介予定派遣として契約した場合はそもそもの有給取得条件である6ヶ月継続勤務に当てはまりません。よって、有給休暇の取得は不可能です。
派遣先企業での直接雇用に切り替わり、その企業での通算労働日数が6ヶ月以上だとしても、切り替え後には雇用主が変わります。この場合、派遣先企業での直接雇用に切り替わってから6ヶ月経過後に有給が取得できるでしょう。
ただし、派遣先企業が特約を定めているケースでは、派遣として働いている期間も労働日数として含まれることもあります。この場合、直接雇用に変更後6ヶ月継続勤務を待たずして有給休暇の取得は可能です。
登録型派遣(有期雇用派遣)として派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結び、途中から紹介予定派遣に切り替えた場合
参考:東京労務管理総合研究所
上図のケースだと、6ヶ月を達した時点での雇用契約を派遣会社(派遣元企業)と結んでいるため、通常どおり有給休暇を取得できます。
派遣社員の有給の付与日数と賃金
派遣社員の有給休暇の付与日数は、取得条件と同様に派遣社員独自のルールがあるわけではありません。よってほかの雇用形態と同じように付与されます。 付与される日数は所定労働時間や日数、勤続年数によって変わることを覚えておきましょう。
有給の付与日数
派遣社員は、条件に当てはまれば以下のように有給休暇が付与されます。
引用:派遣労働者の 労働条件・安全衛生の確保のために|厚生労働省
週の労働時間が30時間以上、または30時間未満でも、週に5日以上勤務している場合は「10日・11日・12日……」の行のとおりに取得可能です。付与日数は勤続年数により変化します。
週の労働時間が30時間未満かつ週の労働日数が4日以下の場合は、勤務日数に応じて有給休暇の付与日数が変わります。「月・火・金のみ出勤」のように働く曜日が決まっている場合、「週所定労働日数」と「勤続年数」が重なったところが付与される有給日数です。
パートやアルバイトなどで週の労働日数が定まっていない場合は、「1年間の所定労働日数」部分のとおり有給休暇の付与日数が決定されます。
有給取得日の賃金
有給休暇取得日の賃金は、以下3つの計算方法のうちいずれか1つが用いられます。
1.平均賃金 | 以下2つの計算方法のうち高い金額 ①過去3ヶ月の賃金総額÷総日数 ②過去3ヶ月の賃金総額÷実労働日数の60% |
2.通常の賃金 | 所定労働時間×時給 (シフト制やフルタイムなど勤務時間が一定の場合に多く用いられる計算方法) |
3.標準報酬日額相当額 | 標準報酬月額÷30 |
どの計算方法を用いるかは会社の就業規則などで規定されているため、派遣会社に確認してみてください。
例えば標準報酬日額から賃金を計算する場合は、従業員が得た給料などの報酬額を1~50等級で区分された「標準報酬月額」で日割りします。そのうえで、表の計算式を用いて支払う賃金の計算が行われる仕組みです。
派遣社員の有給の使い方(申請先)
派遣社員の雇用主は派遣会社であるため、有給休暇を取得したい場合は派遣会社へ申請を行うのが一般的です。基本的に派遣先企業へ申請を行う必要はないものの、業務への影響を考えなくてはいけません。
有給休暇の取得についてのルールは、会社によってさまざまです。「有給休暇開始日の1ヶ月前に申請すること」などの規定が設けられている場合もあるため、できる限り早めに派遣会社や派遣先に相談すると良いでしょう。
有給休暇の取得はすべての労働者の権利ですが、職場での良好な人間関係を保つためにも一定のマナーを守ることは大切です。取得希望日は前もって伝え、繁忙期はなるべく避けるのが望ましいと言えます。
派遣の有給の基礎知識まとめ
有給休暇の取得が義務化されたことで、多くの労働者にとって有給制度は利用しやすくなりました。これまで休暇取得がしにくい立場とされてきた派遣社員にとっても、喜ばしい変化と言えるでしょう。
これから派遣社員として働こうと考えている方は、有給休暇をはじめとした労働者の権利を有効活用するためにも、良心的な派遣会社を見つけることが大切です。
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