2024/04/12

派遣契約とは|種類や期間、似た契約との違いについて解説

派遣契約とは|種類や期間、似た契約との違いについて解説

派遣労働者を受け入れる場合には、労働派遣契約を結ぶ必要があります。このとき、どのような契約形態があるのか正しい契約手順と併せて把握しておかないと、のちのちトラブルを招きかねません。

本記事では、労働派遣契約の種類と期間、類似した契約との違いを解説します。契約締結の流れについても触れているため、労働派遣への理解を深める一助としてみてください。

この記事でわかること
  • 労働派遣契約の種類
  • 労働派遣契約と似た契約との違い
  • 労働派遣契約の期間と契約締結の流れ
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派遣契約とは

派遣契約とは「人材派遣会社と雇用関係にある労働者を、他社で労働させる・自社で労働してもらう」ための契約のことです。法律上は労働者派遣契約と呼ばれ、派遣元企業(派遣会社)と派遣先企業の双方が同意のうえで成立します。

労働派遣契約を結ぶうえで注意したいのが、労働者と雇用契約を結んでいるのはあくまでも人材派遣会社であり、派遣先企業ではないという点です。しかし、現場での指揮命令権は派遣先企業にあるため、労働者は派遣先企業の責任者の指示で仕事を行います。

厚生労働省の「第7 労働者派遣契約」によると、労働派遣契約の意義は以下のとおりです。

(1) 法第26条にいう「労働者派遣契約」は、「契約の当事者の一方が、相手方に対し労働者派遣することを約する契約」であり、当事者の一方が労働者派遣を行う旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすること又は当事者の一方が労働者派遣を受ける旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすることにより成立する契約であり、その形式については、文書であるか否か、又有償であるか無償であるかを問うものではない。

第7 労働者派遣契約|厚生労働省

労働者派遣契約は2種類

労働派遣契約には、「基本契約」「個別契約」の2種類があります。派遣ビジネスにおいては、いずれの契約も人材派遣会社と派遣労働者を受け入れる企業とのあいだで結ばれるものです。それぞれについて解説します。

基本契約

基本契約とは、派遣労働者を派遣する・してもらう取引について、派遣元企業と派遣先企業で取り決めを行う契約のことです。基本契約は法律上で定められたものではなく、締結や記載事項に決まりはありません。

しかし、双方のトラブル防止やリスク回避の目的で、基本契約を締結するケースが一般的です。基本契約を結ぶのは、同一の派遣会社から複数人の派遣労働者を受け入れる際に、その都度基本契約を結ぶ手間を省く意味もあります。

なお、労働者派遣法において基本契約書の保管義務はありません。基本契約で取り決められる事項の例は次のとおりです。

  • 総則
  • 秘密保持について
  • 個人情報の保護と取扱いについて
  • 年次有給休暇について
  • 派遣の中止、延長、変更について
  • 損害賠償、違約金について

個別契約

個別契約とは、派遣労働者を派遣する・してもらうという行為に対して、労働者ごと個別で結ぶ契約のことです。一人の派遣労働者について業務内容など個別の取り決めを行うもので、派遣先企業では個別契約の内容に基づき業務に関する指揮命令が行われます。

基本契約は法律上の定めがない一方で、個別契約は労働者派遣法で締結・取り決め事項・保管が義務づけられており、労働者派遣法第26条に規定された内容を確実に盛り込まなければなりません。

法律で定められている取り決め事項の一例は以下のとおりです。

取り決め事項 具体例
業務内容 計算ソフトを用いた書類作成、データ入力、電話・メールの対応
就業場所 派遣先企業の住所
就業時間 8時から17時まで
休憩時間 12時から13時まで
指揮命令者 営業事務課部長〇〇〇〇(氏名)
派遣期間 20△△年4月1日から20△△年3月31日まで

基本契約は企業間でのトラブルやリスク回避を目的としているのに対し、個別契約は派遣労働者の立場を守ることを目的としています

労働者派遣契約と似た契約との違い

他社から人材を受け入れるという点において、労働者派遣契約と類似した契約に「業務委託契約」があります。両方とも社外の労働者に業務を任せるための契約という共通事項がありますが、性質の違いに留意しましょう。

業務委託契約は、受け入れ先企業に指揮命令権がありません。つまり業務のやり方は労働者(または企業)に一任されるため、受け入れ先企業に具体的な業務に関する指示を行うことは不可能です。

ほかにも両者には以下のような違いがあります。

  労働者派遣契約 業務委託契約
雇用主 派遣会社 なし
派遣先企業の指揮命令権 あり なし
期間の定め< あり(法律上) あり(案件ごと)
労働者に求めるもの 労働力 成果・制作物 (広告・WEBサイト制作など)
賃金 給料 報酬

労働派遣契約は法律上で契約期間に定めがあるものの、業務委託には法律上の契約期間の定めはありません。そのため、依頼する案件ごとに企業が期間を決めて委託するという形を取っています。

労働者派遣契約の期間

労働派遣契約は、労働者派遣法によって「事務所単位・個人単位」と「雇用形態別」で契約期間が定められています。派遣労働者を雇い入れたいと考えている場合は、それぞれの違いについて理解しておきましょう。

事業所単位・個人単位の契約期間

派遣労働者をしてもらうには、労働派遣法で定められた派遣期間の制限を守らなければなりません。これを「派遣の3年ルール」と言い、事業所単位と個人単位のそれぞれでルールが設けられています。

事業所単位

事業所単位の3年ルールとは、「同一の事業所に派遣労働者を派遣できる期間は3年」と定められたルールのことです。派遣労働者一人単位ではなく、その事業所で派遣労働者自体を受け入れられるのが最大3年という意味になります。

事業所単位の3年ルールとは、「同一の事業所に派遣労働者を派遣できる期間は3年」と定められたルールのことです。派遣労働者一人単位ではなく、その事業所で派遣労働者自体を受け入れられるのが最大3年という意味になります。

例えば、同じ派遣会社に雇用されているAさんとBさんがいたとしましょう。すでに1年間派遣労働者として働いているAさんの企業にBさんが派遣されたとすると、Aさんは最大3年働くことができますが、Bさんは2年しか働けません。

場合によっては、3年未満で派遣期間が終了するケースもあります。しかし、延長措置を取ることで何度でも最大3年延長することが可能です。

個人単位

個人単位の3年ルールとは、「同一事業所かつ同一部署で、同じ派遣労働者を派遣できるのは最大3年」と定められたルールのことです。事業所単位の延長措置を取れば、同じ派遣労働者を同じ事業所で受け入れることはできますが、同じ部署での受け入れはできませ

個人単位の3年ルールとは、「同一事業所かつ同一部署で、同じ派遣労働者を派遣できるのは最大3年」と定められたルールのことです。事業所単位の延長措置を取れば、同じ派遣労働者を同じ事業所で受け入れることはできますが、同じ部署での受け入れはできません。

例えばある物流会社の事務課で3年働いたAさんは、継続して事務課で働くことはできず、営業部など違う部署への移動が必要となります。しかし、Aさんと同じ派遣会社から派遣されたBさんは事務課での勤務が可能です。

事業所単位同様に個人単位での延長措置もありますが、それはあくまで例外的な措置であり、基本的には延長できません。

雇用形態別の契約期間

派遣労働における雇用形態は、以下の3つに分かれています。

  • 登録型派遣(有期雇用派遣)
  • 常用型派遣(無期雇用派遣)
  • 紹介予定派遣

雇用形態ごとの派遣期間の違いを見ていきましょう。

登録型派遣

登録型派遣は一般的な派遣を指し、派遣期間を決めたうえでその都度更新を行う雇用形態です。まず派遣会社に登録し、派遣先企業が決定したあとで派遣会社と雇用契約を結びます。

派遣先企業での派遣期間が終了すると、派遣会社との雇用契約も終了するのが特徴です。就業期間は契約によって違いますが、3ヶ月や半年など更新日が設定されその都度再契約し、前述した3年ルールも適用されます。

常用型派遣

常用型派遣は、登録型派遣と違って派遣期間を定めることなく派遣会社と雇用契約を結ぶ雇用形態を指します。このため派遣先企業との派遣期間が終了しても、派遣会社との雇用契約は継続されるのが特徴です。

派遣先企業での就業が決まっていないときも、派遣会社との雇用契約は結ばれています。よって給与面や福利厚生など待遇面が保証されており、安心して働ける雇用形態と言えるでしょう。また、前述した3年ルールも適用されません。

紹介予定派遣

紹介予定派遣は、派遣労働者として派遣先企業で働いてはいるものの、のちにその派遣先企業での直接雇用を見込んだ雇用形態です。派遣期間終了後、派遣会社と派遣先企業との合意のもとで直接雇用に切り替わります。

労働者も派遣先企業も派遣期間中にお互いを見極められるため、双方のミスマッチが起こりにくいことが特徴です。なお、派遣労働者としての最長契約期間は6ヶ月を超えない範囲で行われます。

労働者派遣契約を締結する流れ

ここからは、労働者派遣契約を締結する流れを4つのステップに分けて解説します。派遣会社と派遣先企業とのあいだで基本契約・個別契約を結ぶと上述しましたが、それ以外にも必要な工程があることを念頭に置いておきましょう。

①基本契約の締結

派遣元企業と派遣先企業とのあいだで、基本契約を結びます。法律上の定めはないものの、企業間でのトラブルを防ぐ目的での契約締結です。

詳しくは「基本契約」の章で説明しています。

②事務所抵触日の通知

基本契約の締結後、派遣会社と派遣先企業のあいだで取引関係が成立します。ただし、実際に労働者を派遣する前に「事務所抵触日の通知」を行わなければなりません。抵触日とは、派遣労働者を雇い入れて3年が経過する翌日のことです。

派遣労働者を雇い入れようとしている企業は、派遣元企業に対して抵触日の通知を行うよう労働者派遣法26条4項で定められています。これは派遣の3年ルールを守るための措置です。

派遣労働者の受け入れを検討している企業は適切に抵触日を通知し、管理する必要があります。

③個別契約の締結

個別契約は法律上で定められている契約であり、必ず締結しなければいけません。こちらは派遣労働者の権利を守ることを目的とした契約です。

詳しくは「個別契約」の章で説明しています。

④派遣先管理台帳の作成・保存

派遣先企業は、派遣労働者ごとに「派遣先管理台帳」の作成が必要となります。なお、派遣先管理台帳は派遣期間終了日から3年間の保管が必須です。派遣先管理台帳の作成・保存については、労働者派遣法第42条に規定されています。

派遣先管理台帳には派遣労働者ごとの勤務日・時間などを記載し、台帳の作成後は派遣先企業から派遣会社へ記載内容を通知しなければなりません。労働派遣法で規定されている記載事項は、以下のとおりです。

第四十二条 派遣先は、厚生労働省令で定めるところにより、派遣就業に関し、派遣先管理台帳を作成し、当該台帳に派遣労働者ごとに次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 協定対象派遣労働者であるか否かの別
二 無期雇用派遣労働者であるか有期雇用派遣労働者であるかの別
三 第四十条の二第一項第二号の厚生労働省令で定める者であるか否かの別
四 派遣元事業主の氏名又は名称
五 派遣就業をした日
六 派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間
七 従事した業務の種類
八 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項
九 紹介予定派遣に係る派遣労働者については、当該紹介予定派遣に関する事項
十 教育訓練(厚生労働省令で定めるものに限る。)を行つた日時及び内容
十一 その他厚生労働省令で定める事項
2 派遣先は、前項の派遣先管理台帳を三年間保存しなければならない。
3 派遣先は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項各号(第四号を除く。)に掲げる事項を派遣元事業主に通知しなければならない。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov

派遣契約についてのまとめ

派遣契約についての基礎知識や業務委託との違い、派遣期間などについて解説しました。派遣会社と派遣先企業とのあいだで責任の所在がどちらにあるのかを曖昧にすると、のちのち大きなトラブルを引き起こし、業務遂行の大きな支障となるかもしれません。

他社から人材を受け入れる際には、法律上の制限や義務の遵守が必要になるため、正確に理解しておくようにしましょう

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この記事を書いた人

ワークスタッフ コラム制作チーム

人材派遣業務を展開しているワークスタッフのコラム制作チームです。人材派遣に関連した情報をコラムを通じてお届けします。平成10年から携わってきた労働者派遣に関する情報を、当社の経験を踏まえて正しくわかりやすくお伝えします。