派遣会社の退職で失業保険はもらえる?会社都合になるケースや条件とは
失業保険とは、何らかの事情で働けなくなってしまった際に、次の仕事まで安定した生活を守りつつ、1日でも早く就職できるように支援する手当です。正式には雇用保険の失業等給付(基本手当)と言われています。雇用形態に関係なく受給対象となりますが、派遣社員も同様に失業保険の給付を受けられるのでしょうか。
本記事では、派遣会社の退職で失業保険がもらえるのかどうかを解説します。受給条件やケースごとの退職に関しても触れていますので、ご自身が該当するか確認する際に役立ててみてください。
派遣社員でも条件を満たせば失業保険はもらえる
失業保険は正社員やアルバイト、派遣社員など雇用形態に関係なく、受給条件さえ満たしていれば対象となります。失業保険の受給条件は、以下の3つ全てを満たしていることです。
- 雇用保険の加入実績がある
- 離職前の2年間で雇用保険の被保険者期間が通算で12ヵ月以上
- 働く意思があるにも関わらず失業している
これら全てを満たすことで受給対象となります。それぞれの条件を詳しく見てみましょう。
条件1.雇用保険の加入実績がある
失業保険は雇用保険の加入者を対象とした制度のため、雇用保険の加入実績がなければ受給できません。雇用保険の加入対象は、以下の3つです。
- 31日以上の雇用見込みがある(契約時点での雇用継続の見込み)
- 1週間の所定労働時間が20時間以上(例:1日4時間×週5であればOK)
- 昼間学生でないこと※夜間部や通信制の学生は除く
例えば3ヵ月の派遣契約を結び、週5日10:00〜16:00の勤務時間で働く方は1週間の所定労働時間が20時間となるため、雇用保険へ加入していなければなりません。よってこの場合、加入期間の要件を満たせば失業保険の支給対象となります。
なお、派遣は30日以内の派遣雇用(日雇い派遣)が原則として禁止です。つまり派遣労働者の場合、31日以上の雇用見込みがあるケースが一般的なため、雇用保険が未加入の人は少ないといえるでしょう。
ただし、特定の業務に携わる派遣の短期労働者は31日未満の就業が例外的に認められており、特別な雇用保険に加入が可能です。なお、雇用保険に加入しているかどうかは給与明細の「雇用保険料」の欄で確認できます。
派遣の短期労働者に関する情報は、以下の記事をご覧ください。
条件2.離職前の2年間で雇用保険の被保険者期間が通算で12ヵ月以上
派遣会社を退職する前の2年間のうち、通算で12ヵ月以上の被保険者期間があれば失業保険の対象です。ただし、倒産や解雇など条件に当てはまる場合には、被保険者期間が「離職前の1年で通算して6ヵ月以上」に緩和されます。なお、被保険者期間の算定では、暦日が15日以上、且かつ賃金支払基礎日数が11日以上あれば2分の1ヵ月としてカウントされますが、休業や欠勤等で満たない場合は0となり被保険者期間としてカウントされません。
被保険者期間の緩和条件の対象者となるのは、派遣会社の倒産や解雇によって離職した方、期間満了後の更新を希望したものの次職の提案がなかった等、派遣元の落ち度により更新されなかった方などです。
条件3.働く意思があるにも関わらず失業している
失業保険は、失業した人が生活に不安を覚えることなく、就職活動に専念するためのサポートとして支給されるものです。そのため働く意思がない場合、雇用保険の加入実績があり被保険者期間の条件を満たしていたとしても、失業保険は受給されません。
働く意思がないとみなされる例としては、次のようなものが挙げられます。
- 病気やケガでしばらく働けない場合
- 妊娠/出産/育児ですぐには働けない場合
- 定年などで退職し休養する場合
- 結婚などで家事に専念する場合
なお、失業保険を受給できる期間は離職日の翌日から原則1年間です。期限が過ぎてしまうと、所定給付日数分が満額支払われていなくても支給が打ち切りとなるため注意しましょう。
派遣会社の失業保険はすぐもらえる?待期期間と給付制限の詳細
派遣会社(派遣元企業)を退職して失業保険を受ける場合、いつから受給できるのでしょうか。失業保険の受給開始タイミングは、仕事を失った理由が「自己都合」と「会社都合」のどちらなのかによって異なります。
受給が始まるタイミングの違いは、以下のとおりです。
- 自己都合の場合:7日間の待期期間の翌日から2ヵ月の給付制限
- 会社都合の場合:7日間の待期期間の翌日に支給される
派遣労働者が退職する際に、自己都合・会社都合それぞれどういったケースが該当するのかを詳しくお伝えします。
自己都合になるケース
自己都合の退職では、1週間の待期期間を経た翌日からさらに2ヵ月の給付制限が発生します。派遣労働者の退職で自己都合になるのは、自ら退職を希望して辞めた場合です。例えば次のようなケースが挙げられます。
- 更新満了前に次の派遣先を紹介されたのにも関わらず自分の意志で退職した場合
- 契約期間中に自身の都合により辞めた場合
派遣会社(派遣元企業)や派遣先企業の事情に関わらず、自らの意思で辞めてしまった場合は、自己都合になると理解しておきましょう。
会社都合になるケース
会社都合の退職は自己都合退職よりも給付が早く、申し込み後、1週間の待期期間を経た翌日には支給されます。派遣労働者の退職で会社都合となるのは、会社側の事情により退職を余儀なくされた場合です。具体的には次のようなケースが挙げられます。
- 会社が倒産した場合
- 解雇された場合
- ハラスメントなどの被害を受け、就業を継続できなくなり退職となった場合
- 契約期間が満了したあとに、何の連絡もなく次の派遣先を1ヵ月以上紹介してもらえない場合
経営破綻したり、業績悪化による人員整理の対象になったりした場合などは、自分自身には退職の意思がないため会社都合となります。また、契約満了にあたって、就業の意思があり、派遣会社に伝えていたにも関わらず次の派遣先の紹介がされなかった場合も会社都合となることを覚えておきましょう。なお、仕事を紹介されたにもかかわらず希望条件に合わない等の理由で拒否し、退職した場合、自分の意思で退職を選んだことになるため自己都合となります。
◎ 派遣元事業主が、派遣労働者に対して雇用契約期間が満了するまでに次の派遣就業を指示しない場合には、派遣労働者が同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業を希望する場合を除き、雇用契約期間満了時に被保険者資格を喪失するとの取扱いとなります。
派遣会社の退職でもらえる失業保険の受給日数や金額
失業保険は、離職の理由や雇用保険の加入期間、年齢などによって給付日数や給付金額が異なります。ここでは、派遣労働者が退職するときにもらえる失業保険の受給日数・金額を確認してみましょう。
給付日数
失業保険の給付日数は、「離職の理由」「雇用保険の加入期間」「年齢」の3つの条件で決まります。そのうえで、受給資格のある方は大きく以下の2つに分類可能です。
①:特定受給資格者および一部の特定理由離職者……会社の倒産や解雇による退職者など
②:①以外の離職者……次の派遣先の紹介を自らの意思で断ったケースなど
それぞれのケースにおける給付日数を解説します。
【①:特定受給資格者および一部の特定理由離職者の場合】
特定受給資格者とは、主に会社都合によって退職した方が当てはまります。例えば、会社の倒産や解雇で退職した方や、更新を明示されたうえで派遣契約を結んだものの、更新されずに退職した方などが挙げられるでしょう。
一部の特定理由離職者については、期間満了後の更新を希望したにも関わらず、更新がなかったことにより退職した方が該当します。ただし、令和7年3月31日までに退職した方に限定される点に注意しましょう。
特定受給資格者および一部の特定理由離職者の年齢・雇用保険の加入期間による給付日数の違いについては、下表のとおりです。
雇用保険の被保険者であった期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年 未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年 以上 | ||
年齢区分 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上45歳未満 | 90日 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330 | ||
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
【②:①以外の離職者の場合】
①以外(特定受給資格者および一部の特定理由離職者以外)の離職者は、事前に「更新なし」など更新の可能性のないことが契約時に明示されていたケースが当てはまります。例えば、契約時に更新がないと提示されたうえで3ヵ月間の派遣契約を結び、3ヵ月働いて辞めた場合などが該当するでしょう。
なお、事前に更新が明示されていた契約であっても、自らの意思などにより自己都合で断った場合は「①以外の離職者」となります。「①以外の離職者」の場合、年齢区分は関係ありません。雇用保険の被保険者であった期間に応じて給付日数が決まります。
雇用保険の被保険者であった期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年 未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年 以上 | ||
年齢区分 | すべての年齢 | 90日※ | 90日 | 120日 | 180日 |
※特定理由離職者は、雇用保険の被保険者であった期間が離職以前1年間で6ヵ月以上あれば、受給資格を得られます。
給付金額
失業保険の給付金額は、離職した日の直前6ヵ月の賃金(賞与は除く)を足して180で割った金額に、50〜80%の給付率をかけた金額となります。給付率に関しては、もとの賃金が低いほど高く設定されているのが特徴です。
なお、給付金額は年齢区分ごとに上限が定められています。年齢区分ごとの給付制限額は以下の表でご確認ください。
年齢区分 | 失業保険の上限額 |
---|---|
30歳未満 | 6,945円 |
30歳以上45歳未満 | 7,715円 |
45歳以上60歳未満 | 8,490円 |
60歳以上65歳未満 | 7,294円 |
派遣会社の退職で失業保険を受給する際の流れや手続き
派遣労働者が退職し失業保険を受給するまでには、いくつか必要なステップがあります。ここでは、失業保険受給までの流れと必要な手続きをステップごとに確認してみましょう。
①雇用保険被保険者証と離職票を交付してもらう
失業保険の受給申請をするうえで欠かせない書類は、「雇用保険被保険者証」と「離職票」の2つです。雇用保険被保険者証については、交付後に派遣会社(派遣元企業)で保管しているケースもあるため、手元にないようであれば派遣会社(派遣元企業)に確認しましょう。
離職票は退職後、一般的には自宅に届きます。(自分が取りに行くケースもあります)退職理由など、記載内容に間違いがないかきちんと確認することが大切です。2週間を過ぎても交付されない、または事業主の所在がわからないときには、住居を管轄するハローワークに問い合わせましょう。
②ハローワークで求職の申込み・受給資格の決定が行われる
失業保険を受け取るには、支給条件の一つである「働く意思」を示すためハローワークで求職の申込みをしなければいけません。雇用保険被保険者証と離職票が用意できたら、お住まいの場所を管轄するハローワークに行き求職の申込みと離職票の提出を行いましょう。受給要件を満たしていることが確認できたのちに、受給説明会のお知らせがあります。
なお、給付日数や給付金額に関連してくる退職理由については、受給資格決定の際に判定が行われるのが一般的です。判定結果の退職理由に異議がある場合は、その旨をハローワークに相談してみてください。
③雇用保険受給説明会に参加する
受給資格の決定の際に、雇用保険受給説明会のお知らせがあります。日時が決められているため、案内に従って指定の場所に行き、説明会に出席しなければいけません。
説明会では、失業保険の受給について説明を受けるため、ハローワークで受け取った「雇用保険受給資格者のしおり」と筆記用具などを持参しましょう。説明会では失業保険の制度について話を聞けるほか、1回目の失業認定日が知らされます。
④失業の認定を受ける
失業保険を受給するには4週間に一度、失業認定を受ける必要があります。失業の認定とは、指定日に管轄のハローワークに行き、求職活動の状況の報告を行うことです。認定日の日時は個人の都合で決めることはできず、あらかじめ案内があります。
求職活動の実績は次の認定日までに原則2回以上必要となり、求人サイトの閲覧などは求職活動として認められません。求人の応募やハローワークが実施する職業相談、セミナーの受講などの活動実績が必要です。
ほかにも地方自治体が開催する就職相談やセミナーへの参加、再就職に関する国家試験や検定などの資格試験を受けることも対象となります。
⑤受給される
失業の認定後約一週間程度で、自身が指定した口座に失業保険が振り込まれます。金額などに誤りがないか確認しておきましょう。
給付日数の上限までの期間に、失業の認定と受給を繰り返しながら、再就職に向けて活動することになります。失業保険で生活を確保しつつ、受給期間中に再就職を目指しましょう。
派遣の失業保険に関するよくある疑問
派遣労働者の失業保険に関するよくある疑問とその回答をまとめました。失業保険の受給にあたって不安がある方は参考にしてみてください。
1年で辞めても失業保険はもらえる?
先述のとおり、以下の3つに当てはまっている場合は失業保険がもらえます。
- 雇用保険の加入実績がある
- 離職前の2年間で雇用保険の被保険者期間が通算で12ヵ月以上
- 働く意思があるにも関わらず失業状態にある
ただし、就業期間が1年の場合は、2の「離職前の2年間で雇用保険の被保険者期間が通算で12ヵ月以上」に当てはまらない可能性があります。働き方によっては、雇用保険の加入条件に該当しないケースがあるためです。
- 31日以上の雇用見込みがある(契約時点での雇用継続の見込み)
- 1週間の所定労働時間が20時間以上(例:1日4時間×週5であればOK)
- 昼間学生でないこと ※夜間部や通信制の学生は除く
例えば31日以上の雇用見込みで入社し、最初の1ヵ月は1日3時間の週5日(週15時間)で働き、残りの11ヵ月で就業期間を20時間以上に延ばして働いたとしましょう。この場合、被保険者期間が11ヵ月となり条件から外れてしまいます。
なお、被保険者期間が通算12ヵ月以上という条件に当てはまらなくても、特定受給資格者および特定理由離職者に該当する場合は例外です。雇用保険の被保険者であった期間が離職以前1年間で6ヵ月以上あれば、受給資格を得られます。
次の仕事が決まるまで失業保険はもらえる?
「派遣会社の退職でもらえる失業保険の受給日数や金額」で解説したとおり、失業保険を受給できる期間は、離職の理由と雇用保険の加入期間によって決まります。仕事が決まったらハローワークに連絡したうえで、入社日の前日に来所し、就職日前日までの失業認定を受けなければいけません。期間内に就職が決まるようであれば、失業保険がもらえるのは就職日前日までとなるためです。
なお、早期に就業が決まったときは、申請を行うことで再就職手当を受けられます。また、再就職手当を受給した方は、就業後6ヵ月の賃金が離職前の賃金よりも低い場合に就業促進定着手当をもらうことも可能です。
派遣社員でも失業保険はもらえる?【まとめ】
失業保険は雇用形態に関係なく受給対象となるため、派遣社員であっても受け取れます。しかし、失業保険の給付を受けるには雇用保険の加入期間や再就職の意思など、条件を満たさなければいけません。まずは給付条件を確認し、対象となる方はハローワークで手続きを行いましょう。
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